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自筆証書遺言を作成したが、その遺言書原本がない場合に相続登記はできるか?

自筆証書遺言による相続登記には、その遺言書原本を添付資料として登記申請をします。

そして、特にその例外規定はありません。

ただ、そう言っても大事な書類でも紛失したりするものです。

今回、検認手続きをした後に、諸般の事情で、遺言書原本を提出できない事案の対応をしました。

つまり、裁判所に提出する段階では原本があったものの、その後、登記では原本がなくなっているような状況です。

この場合は、裁判所の検認手続きにおいて、コピーをとり、検認調書が作成されています。 その保存期間は5年(裁判所によっては、それを超えて保管しているところもあるようですが)です。

つまり、遺言書原本のコピーを裁判所がしっかり保管していてくれています。

これは証拠資料としては、とても信憑性の高いものですよね。

検認調書は裁判所に謄本が請求できます。

 

登記研究585 平成8・10 P137 には

「検認調書は、検認年月日、立会人などの形式的記載内容とともに、検認の実質的内容をなすところの遺言書の記載内容、形状その他外部的状態によって検認手続き全体を公証する書面であるが、登記官は、自筆証書遺言として申請書に添付された書面に不自然な書き込みがある等の疑義を生じた場合には、自筆証書遺言の原本に代え、この検認調書の謄本を添付する(平成7年6月1日民三第3102号民事局第三課長回答)などの補正の機会を与えて、自筆証書遺言の真正について形式的審査を行い、登記の受否を判断することができるが、この取り扱いも検認手続きの存在が自筆証書遺言の真正を相当程度担保するものであるとの考え方によるものであろう。」

とあります。

 

つまり、法務局(登記官ごと)の判断や前提とな状況がそれぞれ異なるので、どんな状況でも処理できる方法とは思えませんが、検認調書謄本の添付による相続登記も可能であるものと考えることができそうです。

今回、当職のケースでは無事相続登記を完了させることができました。

 

自筆証書遺言を作成したが、その遺言書原本がない場合に相続登記はできるか?

→場合によっては、検認調書謄本を利用してできる。

そんなマニアックなお話でした。

登記済の手続きがされた保証書の取扱いについて

登記済証を紛失して、前回の抵当権設定登記を保証書で行っていた事案に遭遇しました。

いわゆる「保証書を、所有権に関する登記以外の権利に関する登記についての登記義務者の権利に関する登記済証として取り扱うことができる」事案です。

いったい、何のことだと言われそうですが、

登記識別情報が権利証として扱われる前の先例(昭和39年5月13日法務省民事甲第1717号)の取り扱いが、まだ生きていますよというお話です。(平成17年2月25日付法務省民二第457号民事局長通達)

つまり、前回も登記済証をなくしていたのだから、今回も当然、その登記済証はないでしょう。
しかし、前回の登記申請で義務者として保証書を作成し、その申請で登記済の押印をされた保証書があるなら、その義務者は同一人物(また保証させて処理するのは酷)でしょう。
それならば、その登記済の保証書を持ってきた人は、同じような(所有権以外の権利の)処分は認めても問題ないのじゃない?

という、規定です。

本来はもう少し厳密なお話なのですが、(要約しすぎていたらゴメンナサイ)要するにそういう先例です。

注意したいのは、

*「所有権移転」等の登記申請には使えないこと。(本人確認証明情報の作成または事前通知等が必要になるでしょう)

*保証書には登記済の印鑑が押されているが、普段確認している「登記済の印に受付番号がはいっている」ものではなく、通常の設定登記におされる登記済の赤印であること。

なんかでしょうか。

最近はめっきり減った事案だと思いますので、同じような事案に遭遇された方は、法務局で事前に登記官に確認されることをお勧めします。

今回は不意に、司法書士らしい内容のブログの更新をしてみました(* ̄∇ ̄*)

ただの鈍化ではない、そう思う

今日は今年の2月14日から稼働する「新オンライン申請システム」の研修に行ってきました。
名古屋中央支部と東支部・熱田・海部支部の合同開催の研修でしたが、書士会館は満員御礼でした。
まぁ、不動産登記の申請が便利になって、今以上にシステムは向上する。デメリットはほぼない。
法務省はとても頑張った という、内容でした。

情報が欲しかったので、まずまず満足できる研修でした。

ところで、研修が終わったのが20時30分過ぎ。
多くの司法書士等は雪崩出るように帰りだし、僕もその流れに乗って会館を出ました。
そして多くが「今日は遅くなったから早く帰らなきゃ」といった雰囲気で帰路についていました。

何人かの知り合いや同期に会いましたが、みなさん足早に消えていきました。

僕もその雰囲気のまま、金山駅に到着しました。

「せっかくだし、まだ遅くないし、いろいろ話とか情報交換とかしたいなぁ・・」
僕はそう思っていました、そして、ちょっと期待していました。
が、そんな風に思っている人は少なそうでした。
僕はすぐに会館を出てしまい、後の状況は分かりませんが、これから何かが起こる雰囲気はなかったようです。

僕の感覚が司法書士一般とズレ始めているのかもしれません。
確かに、ここで寄り道する理由はないし、まっすぐ帰宅するのが正解。

でも、僕は帰らず、事務所に戻りました。

なんというか、何となく。
そもそも、戻る予定でした。。。

まだ働ける時間です。
むしろ、このまま帰ることに何か違和感を覚えました。

事務所に戻ると弁護士が机に向かって起案しています。
人によっては交渉の電話をしています。

遅い時間まで仕事をすることが正義ではありません。
早く帰って、家庭を大事にするほうがむしろ大切です。

ですが、司法書士より弁護士のほうが時間に対して、またチャンスに対して、良い意味でギラギラしています。

司法書士の穏やかで温厚な職務姿勢は好きです。
なので、僕もそうありたいと思っています。

ただ、これから増える弁護士が、必死になって仕事をして、スキルを磨いていき、さらに淘汰されるのに、
司法書士がこの雰囲気では、ちょっと呑気過ぎるのではと、危惧を覚えました。

僕は弁護士に負けたくない司法書士です。
スキルは違えども、成長しあえる同じ士業だと思っています。

弁護士は司法書士に負けるはずがないと思っています。
そしてその努力を受験以降も継続しています。

司法書士のために、
自分たちが将来どうすべきで、どうあるべきかというビジョンを個人的にでも良いから想像してみて欲しい。

自分らしい、夢のある司法書士像を描いていきたいですね☆

残業時間が長くなるのは進化ではなく、感覚の鈍化だと思います。
今月に入って、平日ずっと子供を風呂に入れれず。。。今日で12連敗(涙)
熱く司法書士を語りながらも、パーフェクトにはなれずにいます。
嫁さんに頼りまくりだもの・・・

ホントは格好いいことばかり言ってちゃいけないのも事実ですよ~~(;´Д`)

インターネットで登記申請ができる便利な世の中、の中の人

オンライン(半ライン)申請の減税は、複数の不動産を持っている人の相続登記などではとても有利に働くことがあります。

登録免許税の減税が可能なら、そりゃ依頼者はやって欲しいですよね。

10筆の不動産があれば5万円近くの割引になることもあるので、もちろん依頼者のため利用します。

が、正直、書面申請の方が僕の仕事は速いです。
今までの申請の経験値が書面のほうが多いからというのもあるのですが、オンライン申請が書面申請より良い物とも言い切れないからです。
逐一のツッコミはしませんが、利用していても、実は自分はよく分かってないんじゃないかと思うことがあったりします。
そもそも、パソコンに詳しくなくても司法書士にはなれますし。(`・д・´)

そして、目の前に紙がない申請って何か不安な感じがあるんですよね。(別にミスをする訳じゃないですが、落ち着かないというか・・・)

僕はまだパソコンが好き人間だとは思っていますが、専門的なことはよく分からないこといっぱいです。。
パソコン嫌いな人だったら、ほんと頭にくることが多いような気がします。

少しでもオンライン申請の需要があるかのように、申請件数を増やして、法務省が実績を作りたいのも分かりますが、個人的には、まだまだとっても嬉しいものでも無いんですよね。

来年になれば、きっとこんな気持ちも晴れ晴れさせてくれる新オンライン手続きが出来上がることを祈りつつ、
こつこつ地味な作業にいそしむ金曜日の夜です。。。(T_T)

「一物四価」

お金はモノの流通に欠かせない役割を果たしています。

そして、もうひとつの役割として、価値を表す「モノサシ」としての意味があります。

お金には換えがたい、プライスレスなモノや出来事、感情というものはありますが、
法律の世界では「損害賠償」というものに置き換えて、その価値をお金で表現してしまうことすらあります。

もちろん、人の生命や人権、愛や人徳や礼・ワビサビがお金で買えるなんて話をするわけではありません。
でも、それくらい、この「モノサシ」の力が世の中に普及しているのは事実かと思います。

で、そのお金の「モノサシ」が不思議なことになっているモノ(権利)があります。

それが土地の価格です。

土地の売買は売主がモノや権利を譲り、買主がその代価のお金を支払いを約束することで成立します。

原則的には、代価となる価格は、売り手と買い手が合意した価格であれば良いわけで、その値段こそが土地の価格になります。

これを取引価格(実勢価格)と言ったりします。

しかし、この価格以外にも土地には値段が4種類の土地価格があります。

これを「一物四価」と言います。

さて、どんな土地の価格が思い当たりますか?

司法書士が一番馴染み深いのが

「固定資産税評価額」でしょう。

登記申請手続きの登録免許税の計算には欠かせない存在です。

次に馴染みがあるのが

「路線価」でしょうか。

相続税や贈与税の計算に必要な価格ですので、分野としては税理士さんが得意ですね。
(ちなみに「名古屋の司法書士 浅井健司の浅学菲才にて」の過去の記事に計算方法等を紹介したことがありましたねぇ(*´∇`*))

そして、司法書士の仕事にはあまり関係がありませんが

「公示価格」
「基準地価格」

と言うものがあります。

毎年3月下旬ことに新聞やニュースで、土地の価格が全国的に下がったとか、都心部では上昇したとか、名古屋ではこの地域が最高値をつけたとか、そんな話題のネタになる価格です。
ちなみに公示価格も基準地価格も指導価格であり、土地収用の価格になるわけで、使われ方は似ています。

もう少しこれらの価格の詳細を加筆すると

「公示価格」は国土交通省が発表している価格で、「基準地価格」は都道府県が公示価格の発表の補完に使っています。そして、実際の売買での取引価格とも差が少ない金額になるようです。

「路線価」は国税庁が発表しており、公示価格や基準地価格に比べると8割くらいの金額になることが多いようです。(これもあくまで目安です)

そして「固定資産税評価額」は市町村が決定していて、やはり公示価格や基準地価格に比べると7割くらいの金額になることが多いようです。(これも本当に目安です、というか、実際業務をやっているとびっくりするくらい低い価格であることも多いです。もちろん逆もありますし、、、)

発表している公的機関の思惑がいろいろ見え隠れする不動産の価値。

お金の「モノサシ」としての能力が、面白さと難しさを持っている、そんな一面を見せてくれる場面かも知れませんね。(⌒-⌒)